人がものに触れたときに感じる材質感や感覚は、古くから「風合い」と呼ばれています。
今までは、長年経験を積んだ職人や専門家が判別するような、ごく微妙な違いでの“品質評価の価値基準”は、手の感覚によるあくまでも主観的な基準で、一般の方では判断できないケースがありました。
人が風合いを見分けるときに行う「なでる」、「引張る」、「折り曲げる」、「指で押す」といった動作。
そんな風合いを見分けるときに行う動作と感覚を、精密な試験機上に再現して、主観的であいまいだった物性判断をだれもが共有できる客観的な数値というデータに置き換えること。それが、風合い計測の技術です。
この技術によって、心地よさを追求することはもちろん、残していくことが難しい熟練工の「匠の技」も後世に伝承していくことも可能となりました。
1960年代後半、布の風合い計測について研究を行っていた京都大学工学部の川端季雄博士とカトーテックの共同開発により風合い試験機の試作機が誕生しました。風合い計量と規格化研究委員会の中でこの風合い試験機を使用し、710種もの布の風合いを計測。川端博士と奈良女子大学家政学部の丹羽雅子博士の応用研究により、指や手から感じる主観的な判断を客観的データに置き換えることに成功した“風合い計測技術、KES®”は、「KAWABATA EVALUATION SYSTEM®」の略で業界では一般的に「ケス」と表現されています。
スタートは繊維の測定でしたが、応用範囲の広い「風合い計測技術」は、次々に多彩な産業に活用されていきました。
「食品を口に入れたときの食感」や「容器の持ちやすさ」、「化粧品の使い心地」、「インテリアの快適さ」。あるいは、「コーティングの感触のよさ」など、環境や福祉にまで関わるさまざまな産業において、「風合い計測技術」は役立てられているのです。
そしてその領域は、人を中心に未来に向かって、どこまでも広がっています。